内視鏡センター

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C棟1階 内視鏡センター

 内視鏡センターはC南棟1階に移転し、広さ、設備はともに全国有数の規模となっています。
  当院は日本消化器内視鏡学会指導施設に認定されており、消化器内科医師を中心に、外科医師、呼吸器科医師によって検査、治療が行われています。(担当医の詳細は消化器内科他のホームページを参照してください。)

 近年の内視鏡診断や治療の広がりには目を見張るものがあります。小さな食道癌、胃癌、大腸癌の診断は言うまでもなく、小さな胆嚢や胆管、膵臓の悪性腫瘍を確実に診断することが非常に大切になっています。これらの病気を診断・治療するために内視鏡はなくてはならない機器になっています。勿論、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の正確な診断に内視鏡が用いられていることは周知の通りです。また、胃・十二指腸潰瘍や食道静脈瘤が出血した場合にも、内視鏡による止血処置が有効です。これまで開腹術を必要とされてきた病気に対しても内視鏡による治療がまず行われることが多くなってきました。

 私たちは安全で確実な内視鏡による診断や治療を目指して体制を整えています。また、早期癌の診断に用いられるNBI(narrow band image)と呼ばれる特殊光観察による最新の機器についてもいち早く導入しています。
  内視鏡センターには独立した上部内視鏡室4部屋、下部内視鏡室3部屋、X線テレビ室2部屋があり、スコープなどの洗浄室も上部、下部に分かれて併設されています。プライバシーの確保と感染の防止に万全の体制を取っています。さらに、検査後に休んでいただけるようにリカバリースペースにはリクライニングチェアーとストレッチャーを常備し、検査後などの安全の確保に努めています。心電図モニターの各検査室への配備は勿論のこと、救急に対する設備も完備しています。従事する内視鏡指導医、専門医の人員、内視鏡機種や周辺機器をはじめとする設備の充実では全国的にも高いレベルを達成しています。

各種内視鏡検査・治療について

●食道や胃の早期がんに対する内視鏡>>>

 食道や胃の早期がんに対する内視鏡治療は局所療法であるため、対象は、リンパ節転移の可能性がほとんどなく、一括切除できる病変となります。以前はスネア(投げ輪状のメス)を用いて切除するという内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われてきました。しかし、切除できるサイズに制限があり、部位によっては切除不可能な場合もあるほか、取り残しによる再発の問題もありました。そこで、開発されたのが内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)であり、ESDでは大きな病変やEMRで切除不可能な部位に対しても切除が可能となります。ESD実施時にはまず、電気メスを用いて病変の周囲に目印を付けます。次に、粘膜下層(病変の裏側)に薬液を注入し病変部を浮かせた後に、電気メスで病変の周囲を目印も含めて切開します(全周切開)。その後、粘膜下層を切り広げながら病変を切除していきます。切除した病変は回収し、病理検査を行います。病理検査の結果によっては外科手術など追加治療を検討する場合があります。ESD01

大腸腫瘍(ポリープ・早期がん)に対する内視鏡治療>>>

 がんになる前の大腸ポリープを内視鏡で取ることで、将来的に大腸がんにかかることを予防できるといわれています。当院では、がんになる前の小さなポリープは、外来での内視鏡検査の際に積極的に取り除いています(図1)。001 また、比較的大きなポリープや早期がんに対しては、短期入院の上での治療を行っています。一般的には投げ輪状の電気メスを用いてポリープをとっていますが(図2)、002 この方法では一括で取ることが難しかった大きな腫瘍も、最近では専用の器具を使って取り除くことができるようになっています(図3)。 003

●胆道(胆のう・胆管)や膵臓に対する内視鏡治療>>>

 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)は、内視鏡を口から入れて十二指腸まで進め、胆管や膵管にカテーテルを挿入して造影剤を注入し、胆道・膵管のレントゲン撮影を行う検査です(図1)。ERCP01
 これにより結石や腫瘍といった胆管や胆嚢、膵管の異常を詳しく調べることができます。近年では画像診断の進歩により、超音波検査やCT、MRIでも胆道や膵管の情報が得られるようになってきていますが、悪性の病気が疑われた場合にはERCP実施時に胆道や膵管の細胞や組織を採取して病理検査を行うことがあります。また、胆管・膵管の狭窄に対してプラスチックや金属のステント(筒状のもの)を挿入して、胆汁や膵液の流出障害を改善させる治療を行うことがあるほか(図2)、胆管結石や膵石に対しては内視鏡で取り除く治療も行うことができます(図3)。このようにERCPは胆膵領域の診断、治療に重要な役割を担っています。当科では年間約600件のERCP関連検査・治療を行っており、国内でも有数の実施施設となっています。ERCP02

●超音波内視鏡(EUS)>>>

 体外式超音波検査(US)は、体への負担が少なく、体表から体内の臓器を観察できる点で非常に有用ですが、超音波には、『空気の向こう側、つまり空気・ガスの入った消化管の向こう側が見えない』という弱点があります。
 超音波内視鏡(EUS)とは、超音波装置の付いた内視鏡のことであり、“胃カメラ”と同じように口から内視鏡を挿入し、消化管の中から超音波検査を行うことで、空気の影響が少ない状態で、対象臓器・病変の近くで観察することが可能となります。そのため、体外式超音波(US)では十分な観察が難しい胆管や膵臓、通常の内視鏡では詳細がわからない消化管粘膜下病変の詳細な観察が可能であり、それらの臓器や病変に対する精密検査として行います。EUSは、小さな膵癌の描出に有効であり、今後ますます、その役割が重要になってくると考えます。当院では年間約500例のEUSを行っております。
  ○超音波内視鏡ガイド下穿刺(EUS-FNA)
 超音波内視鏡(EUS)は、画像検査です。画像検査のみでも、ある程度の診断は可能ですが、確定診断のためには、細胞や組織を採取して、顕微鏡で診断すること(病理検査)が必要な場合があります。通常の内視鏡では、消化管の表面(粘膜)の組織採取は可能ですが、粘膜下病変や、消化管壁外の組織採取は不可能です。そのような病変に対しても、EUSで観察しながら、針で穿刺し、安全に組織を採取することが可能となってきており(超音波内視鏡ガイド下穿刺:EUS-FNA)、消化管粘膜下腫瘍や、膵臓疾患、腹腔内腫瘍、リンパ節などに対する診断が可能となってきております。外科的な開腹(または腹腔鏡)での組織採取と比べ、体への負担が少ないことが特徴です。EUS-FNA  ○超音波内視鏡ガイド下ドレナージ
 前述のEUS-FNAの方法を用いることで、以前では外科的な開腹(または腹腔鏡)で治療を行うことが多かった、腹腔内にたまった液体や膿に対しても、体への負担が比較的少なく治療を行うことが可能となってきております(超音波内視鏡ガイド下ドレナージ)。
具体的には、
① 急性膵炎後の膵仮性嚢胞や被包化膵壊死(膵臓の炎症によって、膵臓周囲に液体や膿、壊死したものがたまった状態)
② 腹腔内膿瘍(おなかの中に膿がたまった状態)
などに対して超音波内視鏡ガイド下ドレナージでの治療が可能となってきております。
最近では、閉塞性黄疸(胆管や膵臓の疾患により、胆汁の流れが悪くなった状態)に対する治療として、超音波内視鏡ガイド下ドレナージを行うこともあります。閉塞性黄疸に対する治療としては、ERCP(上記参照)でのドレナージが第一選択として行われますが、時にはERCPが不可能な場合があります。その場合、一般的には、経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)という方法が行われることが多いのですが、この方法の欠点として、体の外にチューブがつながり、排液をためるボトルも必要になるため、日常生活に支障をきたすことが挙げられます。超音波内視鏡ガイド下での胆道ドレナージは、PTBDに比べて新しい方法ですが、治療後の生活の制限がないという利点があります。Drainage