呼吸器外科

はじめに

 呼吸器外科という科は一般の方にはなかなか馴染みのない科と思います。主には原発性肺がんを初めとした肺腫瘍や気胸・膿胸などの良性疾患、また縦隔腫瘍や手掌多汗症などの特殊な疾患まで取り扱います。
 2010年4月から当院で呼吸器外科の本格的な活動が始まって10年以上が経過しました。手術件数も年々増加し、現在では年間で200例近くの手術を行なっています。社会の高齢化に伴い、ますます呼吸器疾患の増加が予想され、呼吸器内科や放射線科など他の診療科との協力を進めながらいかなる疾患にも対応していきたいと考えます。
 2010年の開設当初は外科の1部門として始まった呼吸器外科も2011年4月から呼吸器外科学会の関連施設として認定を受け、2016年から基幹施設に認定されています。外来診療枠も変わらず週3回(月・水・木)で、近隣の先生方からの紹介にも対応できるようになり、様々な相談症例にも応じられるように努力していく次第です。院内でも各診療科の相談に対応し、また援助を受けながら困難症例や臨時手術・救急への対応など幅広い活動が可能になってまいりました。今後も京都第二赤十字病院が地域医療の中心となれるように病・病連携あるいは病・診連携をより充実したものにしたいと考えています。

診療成績

 直近5年間の手術症例数の推移とその内訳を示します。原発性肺がんの手術件数は約80症例で現在も増加傾向を示しています。悪性疾患が増えることは喜ばしいことではありませんが、その大半が手術加療で根治が望める早期症例であることが特徴です。後述しますが肺がん手術の98%以上に胸腔鏡下手術(Da Vinciによるロボット支援手術を含む)が行われ術後約1週間での退院が可能となっています。また緊急手術への対応の結果、自然気胸の手術件数も増加傾向にあります。表に示すようにいろいろな疾患に対する手術加療を行っております。

2019〜2021年の手術症例

  2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
原発性肺癌 61 89 107 81 80
転移性肺腫瘍 9 12 17 11 17
縦隔腫瘍 10 4 13 18 16
気胸 33 35 28 42 52
その他 25 17 29 32 36
総数 138 157 194 184 201

 

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当院での肺がん手術の内容

 ガイドライン上、原発性肺がんの手術適応は術前病期が0期からIIIA期の一部までとされていますが、実際には原発性肺がん手術症例の8割以上をI期の症例が占めており、やはり手術での根治が期待できる症例が増えてきているようです。当科では大半の症例が胸腔鏡下手術となり、昨年は開胸(移行)手術となったのは1%の症例に過ぎませんでした。2か所の穴と4-6㎝の傷口から切除した肺を取り出しています。さらに2022年からはダビンチを用いたロボット支援手術を導入しており、患者さんへの侵襲をさらに軽減できるようになりました。術後の入院日数もパス使用により4~7日(平均5.8日)程度となっています。しかし、患者さんの安全を最優先することが第1目標であり、それぞれの肺がんの大きさや進行度に応じて、必要と判断すれば手術の傷口を広げることもあります。さらに患者さんには治療を理解し結果に満足していただくことが守られなければなりませんので、常に対話ができるように努めています。肺がんは切除肺の病理診断の結果で手術のみで治療が終了する症例と、術後に抗癌剤治療や放射線治療を必要とする症例など多種多様なため、呼吸器内科や放射線治療科と常に連携しながら治療を進めております。病診連携パスの使用も行い、早期の肺がん症例に関しては近隣の開業医の先生方にもご協力をいただいて患者さんを見守っていくようにしております。

肺がん以外の手術について

 近隣の施設からの紹介と救急外来からの依頼で症例数が増加している自然気胸に迅速に対応できるよう、昨年より気胸センターを立ち上げることで紹介症例の不応需を極力減らすよう心がけております。その外科的治療方法について手術内容を説明します。
 若年者の症例では、Uniportal VATSと言われる単孔式手術を採用しており、2〜3cmの開胸創1つで手術を行うようにしています。以前は2〜3個の創部で手術していましたが、特発性気胸は若年者に多いことからcosmeticな面を重要視しています。しかし、肺がん手術と同様に安全性や根治性が損なわれることがあっては意味がないので、必要となれば以前の5mmポート2ヶ所と自動縫合器のための1.5cmのポート1ヶ所で手術を行うこともあります。近年では、若年者(20歳以下)の術後再発率が20%を超えるとの報告もあり、再発防止が重要な課題となっています。当院では症例に応じて胸膜被覆材(サージセルシート,ネオベールシートなど)の選択を行い可能な限り再発を起こさないように対処しています。多くの症例は術後2-3日での退院となっています。一方、若年者以外のどちらかというと高齢者に生じる続発性気胸は少し内容が異なります。基礎疾患にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺線維症があることが多く、治療に難渋することが珍しくありません。そのため、確実な治癒を目指すためにポート2ヶ所に加えて1ヶ所は傷の大きさを3㎝程度にすることもあります。
 さらに再発症例も手術になることがあります。胸膜癒着療法後の症例も手術に難渋することがありますので、同様に1ヶ所は傷の大きさを3cm程度にして手術を行うこともあれば、開胸手術に移行することがあります。

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スタッフ

職 名 名 前 卒業年度 専 門 資 格
部 長 Dr_yanada_2023_R
柳田 正志
H7 肺がん
縦隔腫瘍
気胸
腹腔鏡手術
ロボット手術
日本外科学会 認定医・外科専門医・指導医
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・評議員
胸腔鏡安全技術認定制度認定医
ロボット支援手術certificate, ロボット支援手術プロクター
日本胸部外科学会 認定医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・気管支鏡指導医・評議員
肺がんCT検診認定機構 肺がんCT検診認定医師
日本臨床外科学会 評議員
京都府立医科大学 臨床教授
医 長 石川 成美 H25 呼吸器外科
縦隔外科
腹腔鏡手術
気胸
日本外科学会 外科専門医
医 師 中川 拓水 R3    

地域とのつながり

 京都第二赤十字病院の大きな使命の一つとして地域の中核病院として重要な役割を果たすことがあります。医師会の先生方との病院を挙げての交流は、講演会・研究会・懇親会などがあり、また市民健康講座を通じて患者さんや市民の皆様にも参加していただけるように様々な催し物を行っています。呼吸器外科も積極的に参加し、前述の肺がんの病診連携パスなどもさらに利用できるようにして参りたいと考えております。今後も当院の理念である「歩み入る人にやすらぎを、帰りゆく人に幸せを」に基づき、研鑽を積んでより良い治療を提供していけるよう頑張りたいと思っております。

臨床研究・疫学研究など

  • 悪性胸腺上皮性腫瘍のPD-1・PD-L1作用に関する病態解明

外来当番表

患者さんの紹介については外来当番以外でも地域連携を通して頂ければ対応可能です

  月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
AM 石川   柳田 中川  
PM