循環器内科

診療方針

あらゆる心血管病の診療に全力で取り組みます

★メリットとリスクのバランスを重視した、薬物療法・カテーテル治療を目指します
 循環器内科が担当する疾患は、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症、重症虚血肢)不整脈(頻脈、徐脈)、心不全(急性、慢性)、弁膜症、静脈血栓塞栓症(肺塞栓、深部静脈血栓症)、高血圧症など多岐に渡ります。エビデンス(医学的根拠)に基づいた薬物療法に加えて、必要となれば、安全性を重視しつつ、新しいデバイスを駆使したカテーテル治療で対応しています。

★ハートチームで、最善の治療を目指します
 疾患の特性、重症度によっては、我々循環器内科と心臓血管外科がハートチームとして協議し、患者さんのご意向を踏まえた上で、患者さんにとって最良の治療を提案させていただきます。

★多職種から成る心不全チームが、心不全患者さんの生活の質の向上を目指します
 医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、入退院支援等の多職種で構成される心不全チームが、包括的な指導を通じて、多種多様な問題点の是正に努め、心不全増悪の予防ひいては心不全患者さんの生活の質向上を目指しています。

★地域のかかりつけの先生方と密に連携し、切れ目のない診療を目指します
 一般に心不全、動脈硬化を代表とする心血管疾患は増悪寛解を繰り返すため、長期にわたるリスクの管理ならびに、生活習慣の見直しが必要であり、地域のかかりつけ医の先生方との密な連携のもと、切れ目のない診療に努めています。

 

各分野の専門性を究め、最良のチーム医療を提供します。

★虚血性心疾患・末梢動脈疾患に対する積極的なカテーテル治療による血行再建
 緊急性のある急性心筋梗塞や急性下肢動脈閉塞に対する治療については24時間365日対応しています。また、狭心症に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では、圧ワイヤーによる冠血流予備量比(fractional flow reserve: FFR)測定ならびにFFR-CT検査による生理学的評価や心筋シンチグラフィーによる心筋の虚血所見をもとにした適切な血行再建を心掛けるとともに、高度石灰化、慢性完全閉塞を含めたあらゆる高難易度病変にも対応しています。また、近年、末梢動脈疾患(PAD)に対する血管内治療(EVT)にも積極的に取り組んでいます。

 この度、当院で導入されたFFR-CT検査は、通常の冠動脈CT検査の画像データを元に数値流体力学を用いてFFRを算出することで、従来の冠動脈の解剖学的評価(狭窄、閉塞、動脈硬化プラークの分布)に加えて、個々の冠動脈固有の機能的虚血評価を可能としています(図1)。一方、当院の心筋シンチグラフィー検査装置「D-SPECT」(図2)は、京都府内では当院でのみ導入されており、半導体検出器の特性による高精細な画像ならびに座位での撮像といった特徴があります。シンチグラフィーは、造影剤を使用しないため、慢性腎臓病/末期腎不全の患者さんにも負担が少ない検査ですが、造影剤を使用する冠動脈CT(FFR-CT)と使い分けることで、入院を要さない、より効果的で低侵襲な、心筋虚血の評価も含めた冠動脈疾患の精査が可能となっています。

 これまで高度石灰化を伴う冠動脈病変に対しては、ローターブレーター等の切削デバイスを積極的に使用し、ステント拡張不良や出血リスクが危惧される場合にはあえてステントは留置せずに、薬剤溶出バルーンによる薬剤塗布で対応してきました。このたび、バルーンから音圧波を発生させ、その衝撃波により冠動脈の石灰を選択的に破砕することができる全く新しい作用を持つ「IVLカテーテル」(図3)が当院でも使用可能となり、既存の切削デバイスと使い分けることで、より安全で効果的な冠動脈カテーテル治療が可能となっています。一方、高度石灰化を伴う下肢動脈病変に対する切削デバイス(図4)も本邦でもようやく使用可能となりました。先端のカッターが高速回転することで石灰を効率よく切削し、切削時に生じるデブリスを持続吸引できるデバイスで、当院でも薬剤溶出バルーンと併用し、活用しています。

 虚血性心疾患とは、心臓の血管(冠動脈)が動脈硬化などにより細くなり、心臓の血流が低下した病気です。 狭心症のほか、冠動脈が急に詰まってしまう状態は「急性心筋梗塞」と呼ばれ、心臓の筋肉が壊死していくため、命の危険があり緊急の治療が必要です。末梢動脈疾患とは、主に足の動脈が細くなったり詰まったりすることで、足のだるさや痛みを生じたり、重症例では足が壊疽してしまう病気です。
 カテーテル治療とは、直径1.5-2mmほどの細いチューブ(カテーテル)を動脈から入れ、心臓や足の血管までカテーテルを通した上で、細くなったり詰まった血管をバルーンやステントで拡張し、心臓や足の血流を改善させる治療法です。大きな傷をつけずに治療できるため、患者の負担も少なく、入院期間も数日で済むため、虚血性心疾患や末梢動脈疾患の代表的な治療法となっています。
 虚血性心疾患に行われるカテーテル治療は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、末梢動脈疾患に行われるカテーテル治療は血管内治療(EVT)と呼ばれます。通常、カテーテルは局所麻酔をした上で、手首あるいは、肘や足の付け根から行われます。最近ではより細いカテーテルが開発されたため、手首の動脈から挿入することが増えています。


★頻脈性不整脈の根治で予後改善を目指すカテーテルアブレーション
 あらゆる頻脈性不整脈に対して、薬物療法と経皮的心筋焼灼術カテーテルアブレーションで対応しております。特に、心房細動は心不全・脳塞栓・認知症を引き起こすため、積極的に治療をお勧めしております。一般的に発作性心房細動では治療成績が良く、比較的再発率が低率ですが、不整脈の持続期間が長くなれば治療効果(正常脈の維持効果)が低下し、再発率が高くなります。そのため早期発見と早期治療が大切になります。また、近年カテーテルの進歩に伴い治療成績が向上しており、持続性心房細動でも正常脈に復帰する可能性があり、若い方からご高齢の方まで、諦めない治療を心掛けています。

★命を救い心臓を見守る植込みデバイス治療
 徐脈性不整脈に対するペースメーカー、致死的不整脈に対する植込み型除細動器、心不全に対する両心室ペースメーカーを中心としたデバイス治療を行っています。近年は、カテーテルを用いて心臓内に本体を送り込み、直接心臓に留置するリードレスペースメーカー(図5)ならびに皮下植込み型除細動器(S-ICD)の手術も可能となりました。外来診療では遠隔モニタリングを積極的に導入し、きめ細かいフォローを目指しています。

 心臓は刺激伝導系とよばれる命令系統を電気信号が流れることで、リズミカルに協調した収縮・拡張を繰り返します。心臓の動きは交響楽(オーケストラ)のようなもので、各部分がバランスよく連携・調和して働き、健康なシンフォニーを奏でます。
 この仕組みが破綻し脈が乱れた状態が不整脈で、徐脈(遅い脈)と頻脈(速い脈)に分類されます。徐脈性不整脈は進行すると意識消失発作や心不全などを来たすため正確な診断と適切な治療は社会的にも大切です。
 徐脈は異常に心拍数が低下する病気でペースメーカー治療が一般的です。ペースメーカーは患者さん自身の脈拍や電気信号を常に監視し、脈拍が少なくなりすぎないようにします。
 頻脈の中で心室の筋肉が勝手に興奮してしまい、異常に早く収縮をする、または不規則に震えてしまう状態を心室頻拍や心室細動といいます。この状態では全身に十分な血液を拍出できず、失神や突然死の原因となります。植込み型除細動器は命に関わる不整脈(心室頻拍や心室細動)による突然死を予防するための体内植込み型の治療装置です。
 心臓に何らかの障害が起こり、心臓の中の電気信号が伝わる順序にずれがおき、ほぼ同時に収縮する左右両方の心室がいびつな動きをすることがあります(心室同期障害)。心室同期障害は元々心臓の動きが悪い場合にさらに悪さをして、血液を十分に送り出せなくなって心不全の状態を引き起こすことがあります。このような場合、両心室ペースメーカーを植え込むことで人工的に電気信号をだして規則正しくリズムを作ることで心臓のポンプ機能を助ける治療をすることができます。


★心不全診療・心臓リハビリテーション
 心不全とは、心臓に何らかの異常があり、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器に血液を十分に送り出せなくなる状態をいいます。心臓から血液が全身にうまく回らなくなると、過剰な血液を溜め込み、肺や全身の血管に血液がうっ滞するようになります。こうなると、息切れや疲労感、むくみ(浮腫)を引き起こします。心不全の原因は心臓のさまざまな病気(虚血性心疾患、弁膜症、不整脈、心筋症など)や高血圧があります。

 今後、高齢者の増加に伴い心不全患者の増加が予想されており、心不全パンデミックが起こると言われています。心不全の原因となる心臓の病気に対しては循環器内科、心臓血管外科が連携してハートチームによる治療を行っていますが、心不全の再発による再入院が問題となっており、心不全の再増悪ならびに再入院を予防するために2020年1月より心不全チームを発足させました。医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、入退院支援の多職種で、心不全患者さんのケアの質向上を目指しています。

★睡眠時無呼吸外来
 睡眠時に呼吸が何度も停止する睡眠時無呼吸症候群という病気があります。睡眠時無呼吸症候群は昼間の眠気・倦怠感を引き起こし、社会問題となっています。また心疾患や脳卒中、生活習慣病発症と密接な関連があり、当科でも呼吸器内科・耳鼻咽喉科と連携し診断・治療に取り組んでいます。鼾や日中の眠気のある方はご相談ください。

★自分の足での「歩み」を保つフットケア外来
 足には全身の三分の二の筋肉があり、歩行により体循環が改善されることから「足は第二の心臓」と言われています。自分の足で歩ける人生を守るために、当院では2019年4月よりフットケア外来を開設しています。形成外科、糖尿病内科、循環器内科で協力し、下肢潰瘍のある患者さんの創処置、血行再建、糖尿病治療などを横断的に診療する体制を整えております。

図1

図2

図3

図4

図5

 

循環器内科診療実績

  2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
循環器科入院患者数 1,886例 1,680例 1,604例 1,599例 1,699例
心臓カテーテル手術
(経皮的冠動脈インターベンションPCI)
414例 468例 442例 454例 451例
心臓以外の末梢血管のカテーテル手術(EVT) 251例 267例 264例 251例 235例
全デバイス移植 117例 118例 82例 99例 141例
  植え込み型除細動器(ICD) 11例 14例 1例 1例 12例
  両室ぺーシング(CRT-P) 4例 2例 0例 0例 4例
  両室ぺーシング機能付
  植え込み型除細動器(CRT-D)
4例 5例 1例 1例 5例
経皮的カテーテル心筋焼灼術
(カテーテルアブレーション)
334例 344例 274例 153例 236例

 

患者さんへ

 我々、循環器内科が担当する疾患は、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症、重症虚血肢)不整脈(頻脈、徐脈)、心不全(急性、慢性)、弁膜症、静脈血栓塞栓症(肺塞栓、深部静脈血栓症)、高血圧症など多岐に渡りますが、特に迅速な診断、治療を要する疾患としては、急性心筋梗塞、急性肺塞栓、急性心不全、致死性不整脈等が挙げられます。そのため、突然の胸部痛、呼吸苦を自覚された場合には、ためらわずに救急要請してください。

 中でも、心臓突然死の代表的な疾患である急性心筋梗塞は、冠動脈が突然閉塞し、心筋への血液灌流が不十分となり、心筋が壊死に陥る病気です。壊死心筋は再生することはなく、経過中に心不全や致死性不整脈を合併することもあり、カテーテル治療による迅速な冠動脈の再疎通が求められます。我々の病院では24時間、365日カテーテル治療が対応可能な体制を維持しております。

 一方、かかりつけ医の先生方からご紹介いただいた、比較的安定した患者さんには、まずは心臓超音波検査、血管超音波検査、ホルター心電図、冠動脈CT、心筋シンチグラフィー等の負担の少ない検査を受けていただき、その結果必要となれば、短期間(3日間ほど)のカテーテル検査/治療入院をお勧めしています。

 治療方針については、各種検査結果に基づき、患者さんと相談の上決定します。冠動脈や下肢動脈の狭窄、頻脈性不整脈に対しては、薬剤治療に加えて必要となれば、負担の少ないカテーテル治療を提案させていただいております。しかしながら疾患の特性、重症度によっては、我々循環器内科と心臓血管外科がハートチームとして協議し、手術を含め、患者さんにとって最良の治療を模索しています。

 超高齢者社会を迎え、今後も心不全患者さんの増加が危惧されています。心不全の増悪寛解には、心疾患自体の病勢や薬剤治療の効果に加えて、食事内容、栄養状態、喫煙、飲酒、運動習慣、ストレス等の生活習慣の関与が大きいことが知られています。当院では、医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、入退院支援等の多職種から成る心不全チームが、包括的な指導を通じて、多種多様な問題点の是正に努め、心不全増悪の予防ひいては心不全患者さんの生活の質向上を目指しております。加えて心不全は増悪寛解を繰り返すため、長期にわたる診療、生活習慣の見直しが肝要であり、地域のかかりつけの先生方との切れ目のない診療連携に努めています。

 

スタッフ

職 名 名 前 専 門 資 格
部長 Dr_shiraishi_2023_R
白石 淳
冠動脈疾患
冠動脈インターベンション
日本循環器学会 循環器専門医・近畿支部評議員
日本心血管インターベンション治療学会 専門医・近畿支部運営委員
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本心臓病学会 心臓病上級臨床医(FJCC)
日本冠疾患学会 特別正会員(FJCA)
京都府立医科大学 臨床教授
副部長

tsubakimoto
椿本 恵則

心血管インターベンション
(複雑病変)
末梢動脈インターベンション
循環器一般

日本循環器学会 循環器専門医
日本内科学会 指導医・認定内科医・総合内科専門医
日本心血管インターベンション治療学会 専門医・施設代表医
日本脈管学会 脈管専門医
日本循環器学会 近畿支部評議員
浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会 浅大腿動脈ステントグラフト実施医
医 師
第2検査部長
Dr_inoue井上 啓司 不整脈
心不全
日本循環器学会 循環器専門医
日本内科学会 指導医・認定内科医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
日本医師会 認定産業医
京都府立医科大学 臨床教授
日本循環器学会 近畿支部評議員
医 長 佐分利 誠 循環器一般
心筋虚血
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
医 長 瀧上 雅雄 循環器一般 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 専門医
医 師 民西 俊太 循環器一般 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
医 師 辻 弓佳 循環器一般 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
医 師 大倉 孝史 循環器一般
不整脈
日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
医 師 西村 哲朗 循環器一般
不整脈
日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
医 師 鵜川 陸哉 循環器一般  
医 師 梶原 嵩史 循環器一般  

 

外来当番表

    月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
1診 AM 椿本 瀧上 大倉 白石 民西
PM 椿本
(末梢動脈)
民西
(睡眠時無呼吸)
2診 AM 梶原

鵜川

佐分利 西村
PM
3診 AM       フットケア(椿本)  
PM   西村
(ペースメーカー)
  瀧上
(ペースメーカー)
(2・4週)
大倉
(ペースメーカー)